注目トピック
マンション管理組合・建物オーナーが知っておきたい「建築基準法」の基礎知識

今回は、マンション管理組合様・建物オーナー様が知っておきたい『建築基準法』の基礎知識について解説していきます。
建築基準法とは
「建築基準法」とは建物に関して最低限の基本ルールを定めたもので、国民の生命や健康維持、財産を守ることを目的として定められています。建築基準法は日本で建てられる建物すべてに適応され、建築関係全般のベースとなる法律となっています。
建築確認の手続きと流れ
「建築確認」とは
建築基準法では、建物を「建築」、「大規模の修繕」、「大規模の模様替」をしようとする場合は、工事を着工する前に建築主事という公務員または指定確認検査機関によって、建築基準法に適合しているか確認を受けることを定めています。この手続きを『建築確認』といいます。
建築確認の流れ
「建築」、「大規模の修繕」、「大規模の模様替」を行う際、一般的には建築主の代理者として設計事務所や施工会社が確認の申請書を提出し、次の3つの段階に分けて確認・検査が行われ、問題がなければ確認済証が発行されます。
建築確認 |
着工前の建築計画の時点で行われ、建築物の計画が法令に適合しているかを確認する |
中間検査 |
都道府県や市町村が指定した特定の工程が終わった段階で、その建築物の仕様が基準に適合しているかを検査する |
完了検査 |
工事が完了した段階で、その建築物の性能が法令の基準に適合しているかを検査する |
マンションの大規模修繕工事も建築確認が必要?
ここで気になるのが、マンションの大規模修繕工事を行う際も建築確認が必要なのかということではないでしょうか。
建築基準法では、マンション(共同住宅)において建築確認が必要な「建築」、「大規模の修繕」、「大規模の模様替」それぞれの工事を次のように定義しています。
建築
建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること
大規模の修繕
建築物の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)の一種以上について行う過半の修繕
大規模の模様替
建築物の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)の一種以上について行う過半の模様替
つまり、マンションの大規模修繕工事やリノベーション工事は必ずしも建築確認が必要ではありません。
一般的なマンションの大規模修繕工事は、外壁タイルの張替えや外壁塗装、屋上やバルコニー床の防水シートの張替えなど建物表面の仕上げに関する工事であり、主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)を変更する工事ではないため基本的に建築確認は不要となります。
ただし、建築主事によって「過半」の解釈はそれぞれ異なりますので、大規模修繕工事やリノベーション工事を行う前に各自治体や専門家に相談しておくと安心でしょう。
● ● ● ●
エレベーターの新設・増設も建築確認が必要?
エレベーターがないマンションの場合、修繕計画の中でエレベーター(昇降機)の新設・増設を検討することがあるかと思います。マンションに新たにエレベーターを設置する場合については、建築物としての建築確認(建ぺい率や高さ制限など)に加えて建築設備として建築確認の申請が必要です。
ただし、建物が完了検査を受けていない場合(確認済証が交付されていない場合)は、別途手続きが必要ですので注意しましょう。
建築基準法の「単体規定」と「集団規定」
次に、建築基準法には具体的にどのような規定があるかを見ていきましょう。建物に関する規定は、大きく分けて「単体規定」と「集団規定」の2つがあります。
「単体規定」とは建物自体の安全性を確保するための規定です。建物の耐震構造や給排水設備、採光、火災時の避難経路など、建物に対してのルールが定められています。
「集団規定」とは、健全なまちづくりのために周囲の環境や土地の利用について定められている規定です。都市計画法に基づき都道府県や市区町村ごとに規制が設けられており、建物の用途や容積、建ぺい、高さ、道路との距離などについて地域ごとに定められています。
「違反建築物」と「既存不適格建築物」の違い
「違反建築物」とは、建築基準法などの法律で定められた規定に反して建てられた建物のことです。違反建築物は所有者に対して、工事の施工停止命令、建築物の除去、修繕、使用制限などの違反是正措置命令を行うことができます。是正措置命令に従わない場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる場合があります。
一方、「既存不適格建築物」とは、建築当時は適法だったが現行の建築基準法などの法律に適合していない建物のことをいいます。新たな規定ができた場合、既に存在する建物を新しい規定に適合させる必要はありませんが、一定規模以上の増改築や建て替えを行う際は現行の規定に適合させる必要があるため注意が必要です。
マンションに義務付けられている「定期報告制度」とは
建築基準法第12条では、不特定多数の人が利用する建物の所有者は建物が完成した後も定期的な点検・報告を行うことが義務付けられています。「定期報告制度」または「12条点検」と呼ばれる点検義務です。
建築基準法に基づく定期報告制度では、①特定建築物、②建築設備、③昇降機等、④防火設備の4種類について一級建築士や二級建築士などの専門技術を有する資格者に依頼し、劣化状況についての定期点検を受け、その結果を特定行政庁に報告する必要があります。これらの定期報告を怠る、または虚偽の報告を行った場合は100万円以下の罰金が科せられます。建物を適切に維持・管理していくためにも定期報告はマンション管理組合様や建物オーナー様の大切な義務なのです。
定期報告が必要な建築物は、政令(国)と特定行政庁(建築主事を置く都道府県や市区町村)でそれぞれ規定が異なります。
政令の定めでは、①の「特定建築物」とは劇場、病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店など特定の用途に使われる建物で、その用途に使う部分の床面積の合計が200㎡以上ある建築物のことをいいます。②「建築設備」は給排水設備や換気設備、排煙設備、③「昇降機」はエレベーター、④「消防設備」は随時閉鎖式の防火戸などがこれに該当します。
加えて、特定行政庁ごとにそれぞれ独自の基準で定めた特定建築物及び建築設備等の規定が設けられています。例えば東京都の場合、階数5階以上かつ床面積の合計が1,000㎡を超える共同住宅については、3年ごとに定期報告の対象となっています。
マンションがある「地域」「用途」「規模」によって定期報告の実施内容・周期が異なりますので、必ず各自治体に確認することが大切です。
定期報告制度についてはこちらのセミナー動画でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
マンション管理に関わる関係法規「消防法」
建築関係の法律は他にもバリアフリー法や消防法、都市計画法などさまざまな関係法規がありますが、これらは建築基準法では定められていない詳細をサポートするものとなっています。
特にマンションを管理する上で重要となる「消防法」では、いざという時のために消火設備や避難設備が正しく使用できるように、有資格者による点検を行うことが義務付けられています。点検については、6か月ごとに外観または簡易的な操作による確認をする「機器点検」、1年ごとに実際に作動させ総合的な機能を確認する「総合点検」を行うよう定められています。
さらに、飲食店、百貨店、旅館、ホテル、病院、福祉施設などの特定防火対象物は1年ごと、それ以外の共同住宅、学校、工場、駐車場などは3年ごとに点検結果を消防署へ届け出ることが義務付けられています。
まとめ
今回はマンション管理組合様・建物オーナー様が知っておきたい『建築基準法』について詳しく解説しました。建築基準法は建物を建てる時のルールだと認識される方も多いと思いますが、建物を維持・管理していく上でも大きく関係しています。
特に、建物の所有者には定期的に点検・報告することが義務付けられており、管理組合様や建物オーナー様にとって建物の安全性を維持することは重要な役割となっています。
建築確認の申請についても、実際は施工会社や設計事務所が行うため管理組合様や建物オーナー様が意識されることは少ないと思いますが、基礎知識として覚えておくと安心です。安全・安心・快適な住環境を維持するために、ご自身のマンションがきちんと建築基準法に適合しているのか改めて意識してみるといいかもしれません。
マンションの修繕・改修に関してお困りごとがございましたらお気軽にヨコソーまでご相談ください。